膝軟骨は再生する?すり減りの原因から最新再生医療(PRP・幹細胞)、費用、保険適用まで徹底解説

「階段の上り下りがつらい」「歩き始めに膝が痛む」「正座ができない」…そんな膝の悩みを抱えていませんか? もしかしたら、それは膝関節のクッションである「軟骨」がすり減っているサインかもしれません。

「すり減った軟骨は元に戻らない」と諦めている方もいらっしゃるかもしれません。しかし近年では、「再生医療」という新しいアプローチがそうした考えに変化をもたらすかもしれません。

この記事では、膝軟骨がすり減る原因から、再生医療の可能性、具体的な治療法(PRP療法、幹細胞治療、自家培養軟骨移植術)、費用や保険適用、そして信頼できる医療機関の選び方まで、網羅的に解説します。あなたの膝の悩みが解消され、より良い選択ができるよう、この情報がお役に立てれば幸いです。

なぜ膝の軟骨はすり減り、再生しにくいのか?

まず、膝の軟骨がなぜすり減り、そして一度すり減ると元に戻りにくいのか、その理由から見ていきましょう。

膝軟骨がすり減る主な原因

膝軟骨は、骨と骨が直接ぶつかるのを防ぎ、スムーズな関節の動きを支える重要な組織です。しかし、様々な要因によって少しずつすり減っていきます。

  • 加齢: 年齢とともに軟骨の水分量が減少し、弾力性が失われ、すり減りやすくなります。長年の負担の蓄積も影響します。
  • 肥満: 体重が増えると、膝にかかる負担が大きくなります。歩行時には体重の数倍の負荷がかかると言われており、肥満は軟骨の摩耗を加速させる大きな要因です。
  • スポーツや仕事による酷使: ジャンプや急な方向転換を繰り返すスポーツ、重い物を運ぶ仕事、長時間の立ち仕事などは、膝への負担が大きく、軟骨をすり減らす原因となり得ます。
  • 過去の怪我: 靭帯損傷や半月板損傷、骨折などの経験があると、関節の安定性が損なわれたり、関節の適合性が悪くなったりして、将来的に軟骨がすり減りやすくなることがあります。
  • O脚・X脚: 脚の形によっては、膝の内側や外側に偏った負荷がかかり、特定の部位の軟骨がすり減りやすくなります。
  • 性別: 特に閉経後の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により骨や軟骨がもろくなりやすく、変形性膝関節症を発症しやすい傾向があります。

軟骨が自然に再生しない理由

皮膚の傷が自然に治るように、体には自己修復能力が備わっています。しかし、関節軟骨は一度すり減ると、ほとんど自然には再生しません。その主な理由は、軟骨には血管がほとんど通っていないためです。

多くの組織は血管を通して酸素や栄養を受け取り、老廃物を排出することで新陳代謝を行いますが、軟骨は関節液と呼ばれる液体から、しみ込むようにゆっくりと栄養を得ています。これは、十分な補給路がない遠隔地に例えられます。そのため、損傷が起きても修復に必要な細胞や栄養が届きにくく、軟骨は自力でなかなか治りにくいのです。

軟骨がすり減るとどうなるのか?初期症状から変形性膝関節症へ

軟骨がすり減り始めても、初期には自覚症状がないことがほとんどです。これは、軟骨組織には痛みを伝える神経が存在しないためです。

しかし、すり減りが進行し、軟骨のかけらが関節内に散らばったり、軟骨の下にある骨が露出したりすると、関節を包む「滑膜(かつまく)」という組織に炎症が起こります。この炎症が、膝の痛みや腫れ、熱感を引き起こす主な原因となります。

症状が進行すると、以下のような段階を経ることがあります。

  1. 初期: 立ち上がりや歩き始めのこわばり、軽い痛み、違和感
  2. 中期: 階段昇降時の痛み、正座が困難、膝の腫れ、関節水腫、関節の可動域制限
  3. 末期: じっとしていても痛む、夜間痛、膝の変形(O脚など)、歩行困難

このような状態は「変形性膝関節症」と呼ばれ、日本国内にも多くの多くの方が悩まされています。

注目される「膝軟骨再生医療」とは?

従来の治療法では困難だった「すり減った軟骨へのアプローチ」として、近年「再生医療」が大きな期待を集めています。

再生医療の基本的な考え方:自分の能力で修復を目指す

再生医療とは、ケガや病気で失われた組織や臓器の機能回復を目指す医療技術です。膝の再生医療においては、主にご自身の血液や細胞を利用し、体にもともと備わっている修復能力を引き出し、軟骨のダメージ軽減や組織修復を促すことを目的としています。

なぜ再生医療が膝治療で期待されているのか?

従来の膝治療は、痛みや炎症を抑える薬物療法、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射、リハビリテーションなどの「保存療法」や、進行した場合の「手術療法(人工関節置換術など)」が中心でした。

これらの治療は、痛みを和らげたり、膝の機能を改善したりするのに役立ちますが、保存療法は軟骨そのものを再生させるわけではありません。また、人工関節は非常に有効な治療法である一方で、手術による身体への負担や感染症のリスク、耐用年数といった課題もあります。

再生医療は、「失われた軟骨組織そのものに働きかける」**う点で、従来の治療法とは異なるアプローチであり、根本的な解決につながる可能性を秘めていることから、大きな期待が寄せられています。

再生医療のメリット・デメリット

膝の再生医療には、以下のようなメリットと留意すべき点があります。

メリット:

  • 低侵襲: 多くの場合、手術を伴わず、注射などで治療が行えるため、身体への負担が比較的少ないとされています。日帰りや短期入院で済む場合もあります。
  • 自己組織利用: ご自身の血液や細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーのリスクが低いと考えられています。
  • 根本的なアプローチの可能性: 痛みの原因となる炎症を抑えるだけでなく、軟骨組織の修復を促すことで、機能改善につながる可能性があります。

デメリット:

  • 効果の個人差: 治療効果の現れ方には個人差があり、期待したほどの改善が見られない場合もあります。軟骨のすり減り具合や年齢、活動レベルなども影響します。
  • 新しい治療法: 比較的新しい治療法であり、長期的な有効性や安全性については、まだデータが蓄積されている段階です。
  • 費用: 多くは保険適用外の自由診療となり、費用が高額になる場合があります。
  • 限界: すべての軟骨損傷や変形性膝関節症に有効とは限りません。重度に進行したケースでは、効果が限定的となる可能性もあります。

膝軟骨再生医療の主な種類と特徴

現在、膝の治療で行われている、あるいは研究が進められている再生医療には、いくつかの方法があります。代表的なものを紹介します。

PRP(多血小板血漿)療法:炎症を抑え、痛みの軽減を目指す

PRP療法は、血液を採取し、特殊な遠心分離機で血液中の「血小板」を濃縮して患部に注入する治療法です。

  • 仕組み: 血小板には、組織の修復を促したり、炎症を抑えたりする様々な「成長因子」が含まれています。これを濃縮して注入することで、関節内の炎症を鎮め、痛みの軽減や組織修復プロセスの促進が期待されます。
  • 期待される効果: 主に、関節内の炎症抑制、痛みの軽減、組織修復のサポートなどが挙げられます。
  • 治療の流れ:
    1. 採血を行います。
    2. 採取した血液を遠心分離機にかけ、血小板を多く含む部分(PRP)を抽出します。
    3. PRPを膝関節内に注射します。
  • 特徴: 比較的簡便に行え、日帰り治療が可能です。自身の血液を用いるため、アレルギーや拒絶反応のリスクは低いとされています。なお、自由診療となります。

主に脂肪由来の幹細胞治療:組織修復能力に期待

幹細胞治療は、様々な細胞に変化する多分化能と自己複製能力を持つ「幹細胞」を利用する治療法です。膝の治療では、脂肪組織や骨髄などから採取した幹細胞を用いることが一般的です。

  • 仕組み: 幹細胞には、①傷ついた組織に集まり修復を促す、②抗炎症作用を持つ、③様々な成長因子を放出して組織の再生を助ける、といった働きがあるとされています。これを関節内に投与することで、軟骨を含む関節組織の修復や再生、炎症の抑制が期待されます。
  • なぜ脂肪由来が多いのか?: 脂肪組織には骨髄などに比べて多くの幹細胞が含まれており、比較的容易に、かつ低侵襲で採取できるため、広く用いられています。
  • 期待される効果: 炎症の抑制、痛みの軽減、軟骨を含む関節組織の修復促進、機能改善などが期待されます。
  • 治療の流れ:
    1. 局所麻酔下で、腹部などから数グラム〜数十グラム程度の少量の脂肪組織を吸引・採取します。
    2. 採取した脂肪から幹細胞を分離・抽出し、場合によっては培養して細胞数を増やします。
    3. 幹細胞を膝関節内に注射します。
  • 特徴: PRP療法よりも組織修復能力への期待が高いと考えられています。脂肪採取が必要ですが、自身の細胞を用いるため拒絶反応のリスクは低いとされています。多くの場合、自由診療となります。

自家培養軟骨移植術:特定の条件下で保険適用

自家培養軟骨移植術は、自身の健康な軟骨の一部を少量採取し、体外で培養して増やした軟骨細胞を、損傷した部分に移植する手術療法です。

  • 対象: 主に、スポーツや事故による外傷性軟骨欠損症や、骨の一部が壊死して軟骨と共にはがれ落ちる離断性骨軟骨炎が対象です。変形性膝関節症は、現在のところ保険適用の対象外です。
  • 治療の概要:
    1. 関節鏡カメラを使って、体重のかからない部分から少量の健康な軟骨を採取します。
    2. 採取した軟骨細胞を専門施設で約4週間かけて培養し、シート状またはゲル状にします。
    3. 再度手術を行い、損傷した軟骨部分に培養した軟骨を移植します。
  • 保険適用の条件: 保険適用となるには、軟骨の欠損面積が4㎠以上であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。また、実施できる医療機関も、厚生労働省の定める基準を満たし、研修を修了した医師がいる施設に限られます。
  • 特徴: 自身の軟骨細胞を用いるため拒絶反応のリスクは低いですが、2回の手術と入院、リハビリテーションが必要です。適応となる疾患や条件が限定されています。

その他の再生医療・研究中の治療

上記以外にも、細胞を使わずに成長因子のみを投与する方法や、iPS細胞を用いた軟骨再生の研究、自己細胞シートを用いた変形性膝関節症治療の研究なども進められています。これらの多くはまだ研究段階ですが、将来的に新たな治療の選択肢となることが期待されています。

再生医療の効果と安全性やリスク

再生医療を検討する上で、期待できる効果と、安全性やリスクについて正しく理解しておくことが重要です。

実際の効果はどうなのか?改善の可能性と限界

いくつかの研究では、再生医療によって膝の痛みが和らいだり、関節の機能が改善したりする可能性が示されています。例えば、変形性膝関節症に対する幹細胞治療に関する複数の研究をまとめた分析では、プラセボ(偽薬)と比較して痛みや機能の改善が認められた、という報告があります1

しかし、これらの効果には個人差があり、すべての人に同様に現れるわけではないことが現状です。軟骨が完全に元通りになることを保証するものではなく、特に変形性膝関節症が進行している場合には、その効果が限定的である可能性も考慮する必要があります。

再生医療は万能薬ではなく、あくまで治療選択肢の一つとして、過度な期待を持つのではなく、どこまでが限界なのかを正しく理解することが重要です。

安全性や副作用

自己細胞を用いるPRP療法や幹細胞治療は、拒絶反応やアレルギーのリスクは低いと考えられています。しかし、以下のような副作用やリスクの可能性はゼロではありません。

  • 注射・採取に伴うもの: 注射部位の痛み、腫れ、内出血、感染症のリスク。幹細胞治療の場合は、脂肪吸引部位の痛みや内出血、感染のリスクも伴います。
  • 治療後の反応: 一時的な関節の痛みや腫れ、熱感などが現れることがあります。
  • その他: まれに、移植した細胞がうまく機能しない可能性なども考えられます。

これらのリスクについては、治療を受ける前に医師から十分な説明を受け、理解しておく必要があります。また、再生医療を提供する医療機関は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省への届出や計画の提出が義務付けられています。

再生医療の費用と保険適用について

PRP療法・幹細胞治療の費用目安

PRP療法や脂肪由来幹細胞治療などの多くは、現在のところ公的医療保険が適用されない「自由診療」となります。そのため、費用は全額自己負担となり、医療機関によって大きく異なります。

  • PRP療法: 1回の注射あたり数万円〜数十万円程度が目安とされています。
  • 幹細胞治療: 脂肪採取や培養の有無、注入する細胞数などによって異なりますが、一般的にPRP療法よりも高額になり、数十万円から百万円以上かかることもあります。

これらはあくまで目安であり、実際の治療内容や必要な回数によって総額は変動します。必ず事前に医療機関に確認しましょう。

保険適用されるケース:自家培養軟骨移植術の条件と対象疾患

前述の通り、自家培養軟骨移植術は、外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎で、軟骨欠損面積が4㎠以上などの条件を満たす場合に限り、保険適用となります。変形性膝関節症は対象外です。

保険適用の場合でも、自己負担割合に応じた費用が発生します。ただし、手術や入院費用が高額になるため、「高額療養費制度」の対象となる可能性があります。この制度を利用すると、ひと月にかかった医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻されます。上限額は年齢や所得によって異なります。

治療費以外にかかる費用

自由診療・保険診療に関わらず、再生医療を受ける際には、治療費本体以外にも、初診料、再診料、MRIなどの画像検査、血液検査、リハビリテーションなどの費用が別途かかる場合があります。総額でどのくらいの費用が必要になるのか、事前にしっかりと確認することが重要です。

再生医療と他の膝治療法との比較

膝の痛みや変形性膝関節症の治療法は、再生医療以外にも治療法が存在します。ご自身の状態に合わせて最適な治療法を選択するために、他の治療法との違いも理解しておきましょう。

ヒアルロン酸注射

膝関節へのヒアルロン酸注射は、一般的に行われている治療法です。ヒアルロン酸はもともと関節液に含まれる成分で、関節の動きを滑らかにする潤滑作用や、軟骨への栄養補給を助ける役割、痛みを和らげる効果が期待されます。

しかし、ヒアルロン酸注射は軟骨そのものを再生させる治療ではありません。あくまで、膝の痛みを和らげ、関節内の状態を改善することを目的とした対症療法です。軟骨の再生を目指す再生医療とは、目的も作用する仕組みも大きく異なります。

保存療法:基本的な治療法

  • 運動療法: 筋力トレーニングやストレッチ、水中ウォーキングなどを行い、膝への負担を減らし、関節の安定性を高めます。変形性膝関節症治療の基本であり、他の治療と並行して行うことが推奨されます。
  • 薬物療法: 痛みを和らげるための消炎鎮痛薬や、炎症が強い場合にステロイド注射などが用いられます。これらも対症療法が中心です。

保存療法は、初期から中期の変形性膝関節症において検討される治療法です。

手術療法

保存療法や再生医療で十分な効果が得られない場合や、症状が重度に進行した場合には、手術療法が検討されます。

  • 関節鏡視下手術: 関節鏡を用いて、傷んだ半月板や遊離した軟骨片などを切除・清掃する手術です。比較的低侵襲ですが、効果は一時的な場合もあります。
  • 高位脛骨骨切り術: O脚などで膝の内側に負担が偏っている場合に、すねの骨(脛骨)の一部を切って角度を矯正し、荷重バランスを整える手術です。自分の関節を温存できるメリットがあります。
  • 人工関節置換術: 傷んだ関節面を金属やポリエチレンなどでできた人工の関節に置き換える手術です。痛みの除去と機能改善に高い効果が期待できますが、手術侵襲が大きく、感染症のリスクや人工関節の耐用年数は一般的に15〜20年程度であることを考慮する必要があります。

再生医療は、保存療法と手術療法の間に位置づけられる比較的新しい選択肢と言えます。

サプリメントの効果はどうなのか?医学的根拠について

膝の健康のために、グルコサミンやコンドロイチン硫酸などのサプリメントを活用している方もいるでしょう。しかし、これらの成分が膝軟骨を再生させたり、すり減りを予防したりするという医学的な効果は、現在のところ十分に証明されていません。大規模な臨床試験においても、プラセボ(偽薬)と比較して明らかな有効性は示されませんでした2。過度な期待はせず、バランスの取れた食事や適切な運動など、基本的な生活習慣を大切にしましょう。

どの治療法を選ぶべきか?重症度やライフスタイルに応じた考え方

最適な治療法は、軟骨の損傷具合、症状の程度、年齢、活動レベル、ライフスタイル、そして希望によって異なります。

  • 初期: まずは運動療法や減量などの保存療法が基本。
  • 中期: 保存療法に加え、ヒアルロン酸注射や、症状によっては再生医療(PRP、幹細胞治療)も選択肢に。
  • 末期: 保存療法や再生医療では改善が難しい場合、骨切り術や人工関節置換術などの手術療法が有力な選択肢となります。

どの治療法が自分に適しているか、メリット・デメリットをよく理解した上で、必ず専門医と十分に相談して決定することが重要です。

失敗しない再生医療を受ける病院・クリニックの選び方

再生医療は比較的新しい治療法であり、自由診療が中心となるため、医療機関選びは特に慎重に行う必要があります。

なぜ慎重な選択が必要なのか?

  • 技術や経験の差: 再生医療は実施する医師の技術や経験によって、効果や安全性に影響が出る可能性があります。
  • 費用の妥当性: 自由診療のため価格設定は様々です。治療内容に見合った費用かどうか、十分に検討する必要があります。
  • 誇大な広告: 効果を過度にうたったり、リスク説明が不十分だったりするケースも考えられます。

確認すべきポイント:信頼できる医療機関を見極める

再生医療を受ける医療機関を選ぶ際には、以下の点を必ず確認しましょう。

  • 実績・経験: その医療機関や担当医師が、膝の再生医療に関してどのくらいの治療実績があるか。
  • 医師の専門性: 整形外科、特に膝関節を専門とする医師が担当しているか。再生医療に関する知識や経験が豊富か。
  • 設備: クリーンベンチ、培養器など、細胞の加工・培養に必要な設備が整っているか。感染管理体制はどうか。
  • 治療内容の説明: どのような種類の再生医療を行っているか、具体的な治療方法、期待できる効果、リスクや副作用について、分かりやすく丁寧に説明してくれるか。質問に真摯に答えてくれるか。
  • 費用の明確さ: 診察料、検査料、治療費、アフターケア費用などの治療費の内訳が明確に提示されているか。追加費用の可能性についても説明があるか。
  • 厚生労働省への届出: 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、適切な再生医療提供計画を厚生労働省に届け出ているか。計画番号などを確認できるとより安心です。

セカンドオピニオンの重要性

治療法や医療機関について疑問や不安を感じる場合は、他の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを積極的に検討しましょう。複数の専門家の意見を聞くことで、より客観的に情報を比較検討し、納得のいく治療選択につながります。

膝軟骨再生の未来:iPS細胞などの研究動向

現在、膝軟骨再生の分野では、さらなる進歩を目指して様々な研究が進められています。

最新の研究で期待されること

  • iPS細胞(人工多能性幹細胞): 自身の細胞から作製でき、軟骨細胞を含む様々な細胞に変化させられるiPS細胞を用いた軟骨再生の研究が活発に行われています。将来的に、より質の高い軟骨再生が可能になるのではと期待されています。
  • 他家細胞(ドナー由来)の利用:幹細胞などの 他人の細胞を安全に利用できれば、細胞採取や培養の手間が省け、より多くの人々が治療を受けやすくなる可能性があります。拒絶反応を抑える技術開発などが進められています。
  • 足場材料(スキャフォールド)の開発: 細胞がしっかりと付着し、軟骨組織がより良く形成されるように、足場となる材料、つまりバイオマテリアルの研究も活発に行われています。

実用化への課題

これらの新しい技術が広く実用化されるためには、有効性のさらなる証明、安全性の確立、コストの低減、安定供給体制の構築など、まだ解決すべき課題も多く残されています。

まとめ

すり減ってしまった膝の軟骨は、血管が少ないため自然に再生することは難しい組織です。しかし近年、PRP療法や幹細胞治療といった「再生医療」が登場し、膝の痛みや機能障害に悩む方々にとって、新しい選択肢として注目されています。

これらの治療は、自身の血液や細胞を利用して組織修復を促す可能性を秘めていますが、効果には個人差があり、多くは自由診療の為費用も高額になる傾向があります。ただし、自家培養軟骨移植術のように特定の条件下で保険適用となる治療法もあります。

膝の痛みの原因やその程度は人によって異なります。そのため、再生医療がご自身に適した治療法なのか、あるいは保存療法や手術療法といった他の選択肢と比べてどうなのかは、整形外科の専門医に相談し、それぞれの治療法のメリットとデメリット、費用などを十分に理解した上で、慎重に判断することが重要です。

この記事が、あなたの膝の悩みに対する理解を深め、より良い治療選択のための一助となれば幸いです。


参考文献

1Jevsevar, D., et al. (2021). The American Academy of Orthopaedic Surgeons Evidence-Based Clinical Practice Guideline on Management of Osteoarthritis of the Knee (Nonarthroplasty), Third Edition. Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons, 29(22), 946-950. 

2Clegg, D. O., et al. (2006). Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis. New England Journal of Medicine, 354(8), 795-808.

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